記事全体

簡単にまとめると

あらゆるモノがつながるIoT(Internet of things)の決済に最適化された分散型ネットワーク

  • IoTとは、車や家電製品などの身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながり、情報のやり取りを行なう構想を指す。
  • IoTでは、リアルタイムで膨大な情報処理や少額決済(1円単位)を行なう必要があるため、ブロックチェーンでは実現が難しかった。例えばビットコインでは、取引承認自体に約10分かかる上に、取引手数料も高い。
  • IOTAは、Tangle(タングル)という独自の分散型ネットワーク技術を用いて、手数料無料かつリアルタイムでの決済処理を実現。ビットコイン等のブロックチェーンでは、マイニングと呼ばれる承認作業が必要であるため、時間がかかる上にマイニングを行なうマイナーへの報酬(=決済の手数料)が必要だったが、IOTAでは、マイニング自体を無くし、取引者同士が承認する形としたことで、高速かつ手数料無料を実現した。
  • 略称はMIOTAとなる。

何がすごいのか?

送金手数料無料で送金ができる

  • IOTAは、ブロックチェーン技術とは異なるDAG(非循環有向グラフ・Tangle)を使うことで、送金手数料を無料にすることを実現。ビットコイン等のブロックチェーンを用いた仮想通貨と異なり、常に手数料なしで送金が可能(=マイニングが存在しない)
  • そのためIoTに適したリアルタイムで少額決済を行なうことができ、例えばレンタカーを借りた際に、数メートル単位で支払いを行なうこと等が可能になる

多量の取引を処理できるため、スケーラビリティの問題がない

  • ビットコイン等のブロックチェーンは、取引を順次承認していく必要があるため、大量の取引が発生した場合は承認に時間がかかり、送金づまりを起こしてしまう
  • IOTAはビットコインと異なる分散台帳技術DAG(後述)を採用しており、取引者同士が承認を行なうため、取引量の制限がない
  • そのため、ビットコインやイーサリアムで問題となっていたスケーラビリティ問題の心配がない

セキュリティが高く、量子コンピューターへの耐性も兼ね備えている

  • IoTでは膨大な取引が行われるが、IOTAでは取引毎にアドレスや秘密鍵が異なるため、他の通貨よりもセキュリティが高い。その結果、ブロックチェーンと比較してもデータの改ざんが困難であり、外部からの攻撃も不可能となっている
  • ビットコイン等のブロックチェーンは、演算能力の高い(現存コンピュータの1億倍)量子コンピュータが実現すると、暗号が解読され、データが改ざんされるリスクを抱えているが、IOTAでは量子コンピュータであっても、改ざんすることはできない

70社を超える大手企業と提携するなど実績

  • IOTAは既に、マイクロソフトやアクセンチュア、富士通など75社が参画する Data Marketplace を稼働
  • 企業以外にも国連プロジェクトサービス機関(UNOPS)との連携も発表されており、国連業務の透明性と効率化を進めていく予定

どんな技術か?

独自の分散台帳技術であるDAG(非循環有向グラフ・Tangle)を採用

  • ブロックチェーンは、複数の取引を一つの塊(ブロック)としてつなげていく(マイニングによってブロックを承認していく)、いわば一直線の鎖であり、先のブロックが承認されないと次のブロックに進まない
  • DAGとは、Directed Acyclic Graph(有向非巡回グラフ)の略であり、取引をブロックにまとめず、一つずつ承認していく形
  • ブロックチェーンと異なり、各取引者が自分たちで取引の承認を行っているので、手数料が発生せず、リアルタイムで取引処理を行なうことができる(=マイナーが存在しない)
    • ブロックサイズに制限がなく、ブロックの生成時間も極めて早い
    • ブロックチェーンでは、ブロックが順番待ちとなっているため、承認時間が長い(約10分)
  • また、各取引は一定量の承認がなければ、承認されない形となっており、この仕組がセキュリティを強固なものにしている(特定の一人が承認したからといって、その取引自体が承認されるわけではない)


Lamport(ランポート)署名技術により、量子コンピュータへの耐性を持つ

  • ランポート署名とは1979年にレスリー・ランポートによって考案された量子コンピュータに耐性を持つと考えられる電子署名技術
  • 量子コンピュータは、現存のコンピュータの1億倍の演算能力を持つため、通常ブロックチェーンに用いられている電子署名技術では、暗号が解読されてしまう可能性高い
  • IOTAが採用するランポート署名では、各取引ごとに256対の秘密鍵を生成するが、量子コンピュータであっても、1対の秘密鍵を求めるには約1分必要と言われている
  • つまり、ランポート署名技術を用いると量子コンピュータであっても256分が必要となる
  • 一方で、IOTAが採用するDAG技術によるブロック生成時間は非常に短いため、実際には量子コンピュータがすべての秘密鍵を解読することは困難となっている

誰が作っているのか?

David Sønstebø(IOTA創業者)

  • IoTやブロックチェーンなどの分散型テクノロジー、スマートシティなどに造形が深いノルウェー出身の起業家

Dominik Schiener(IOTA共同創業者)

  • イタリア出身の起業家。14歳の時にコンピューターゲームを開発し大きな収入を得ていた過去が
  • イーサリアムベースの投票システムの開発やwikiの非中央集権化などにも関与

Sergey Ivancheglo(IOTA共同創業者)

  • 2011年頃からブロックチェーン技術に注目。アルトコインのマイニング等をしていたが、その後自身の会社を立ち上げ

Serguei Popov(IOTA共同創業者)

  • ランダム・ウォーク理論と確率を専門とする数学者

IOTA財団

  • IOTAの開発や運営を行なう非営利財団
  • IOTA財団の存在によって、IOTAコミュニティからIOTAトークンの寄付や政府からの補助金、個人や企業からの寄付を受けられるようになっている

これまでの実績

  • 2015 David Sonstebo, Sergey Ivancheglo, Dominik Schiener, Serguei Popovの4名により、IOTAプロジェクトが発足。発足から数ヶ月後にベータテスト開始。
  • 2017/6 Bitfinexに上場し、価格が高騰。2日後に時価総額トップ6位となった。
  • 2018/1 台北市とスマートシティを目指し連携。TangleID Card」というTangleの技術に基づいた市民カードの発行が予定されている。
  • 2018/2 ドイツの大手自動車部品メーカーBOSCHのベンチャーキャピタル部門がIOTAへの投資を発表。
  • 2018/8 富士通がIOTAをIoTの新たな標準プロトコルにすると発表。
  • 2019/4 自動車メーカー「ジャガーランドローバー」と提携。
  • 2020/2 IOTA財団が資産流出で声明 仮想通貨ウォレットのユーザーが被害に